現在、著作権法では当分の間ということで本には貸与権が認められていない。

 これは、貸与権が作られた経緯と関係がある。もともと貸与権は貸しレコードという業態が現れてからできたものだ。「レコード」というところが時代を感じさせるのだが、この業態ができたことによってレコードを購入せずに借りて録音してすませる層が増えてきたのに対処するためのものだったのだ。

 しかし、その時点においてすでに貸本という業態は広く行われており、それが著作権者の権利を侵害するとは認識されていなかったので、本については貸与権の埒外とされた。

 さて、レコードその他の音楽的著作物に貸与権を認めて本に認めない実質的理由は何か。それは、簡単に複製を作ることができるかどうかにあると思われる。

 CDの場合、借りて録音すれば複製が手元に残るから買ったのと同じ(といわなくても類似した)状況になる。こうなると買うのと借りるのは等価に等しいので、双方から著作権者が報酬を受けられるようにしないとまずいと考えられたのだ。

 コミックの場合、借りてきてコピーをとるのは不可能ではないがあまり意味はない。紙にコピーをとる場合、1枚10円でコピーしたら本物の方が安くなることがほとんどだろう。スキャナで取り込んでメディアに焼くというのも考えられるが、これはそんなに簡単な話ではない。コミックの値段に比べて相当高いイニシャルコストがかかるからだ。

 このように、複製の作られやすさという点でCDとコミックに大きな差がある以上、コミックにも貸与権をという主張にはあまり説得力を感じられない。

 そもそも、一旦読んだら手放してもかまわないようなマンガしか描いてないからこういうことになるんじゃないのかな、と突っ込んで見たくなりませんか?

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